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内視鏡手術センター


 当院では平成20年12月18日「内視鏡手術センター」を開設しました。内視鏡手術センターとは、腹腔鏡、胸腔鏡、体腔鏡手術を専門とする科を代表して器具の適正使用を管理・運営する部署を意味します。このことにより、医療器具の無駄をなくし、また各科が有効に器具を共有することは医療安全の点からも重要なシステムであると考えています。定期的に各科共同の会議を開き、内視鏡技術の向上、安全性の確保にも努力しています。他科の技術を積極的に導入、応用することも当センターの目的の一つです。
 当センターは、外科、呼吸器外科、産婦人科、泌尿器科の4科よりなり、その他に手術室担当看護師、臨床工学技士で構成されています。
 腹腔鏡手術では二酸化炭素で気腹(きふく)を行うことで腹腔内に自由なスペースを作り、良好な視野とともに手術器具の安全な操作を可能なものにしています。また、最近ではハイビジョン映像による拡大視によって通常の開腹手術を凌駕する繊細な手術手技を行うことができるようになりました。一方、医療における安全性の確保はもっとも大切なことです。無理な内視鏡手術はかえって患者の生命を脅かすことになります。当院では、現時点で標準化しつつある、安全が確保できる疾患・手技に対して内視鏡手術を施行しています。

各科手術の紹介
[外科]
 腹腔鏡下胆のう摘出術がわが国でも1990年から始まり、以来腹腔鏡下手術として大腸切除、胃切除、そけいヘルニア手術、虫垂切除、脾臓摘出、副腎摘出、十二指腸潰瘍穿孔手術、など枚挙にいとまがありません。
 当院外科でも1990年から胆のう摘出術を開始し、これまでに上記手術をすべて行ってきました。特に腹腔鏡下胆のう摘出術は年間100例余りあり、最も一般的な術式といえます。脾臓、副腎摘出も腹腔鏡手術を第一選択としていますがヘルニア、虫垂、潰瘍穿孔には現在、腹腔鏡手術を行っていません。そのメリットが少ないと考えているからです。現在、もっとも力を入れているのは腹腔鏡下大腸(直腸を含む)切除と胃切除術です。腹腔鏡下大腸切除は2003年から、胃切除は2009年から開始しています。早期がんを対象としているので年間30例ほどにすぎませんが、症例数は増加中であり、現時点での目標数は年間80例です(当外科の年間手術件数は大腸が250例、胃が200例なので全体の17%程度)。しかし症例数は学会が指導するガイドラインに従って今後増加するものと考えられます。実際の手術手技をシェーマで解説します。

腹腔鏡下低位前方切除術(早期直腸がんに対する標準手術):

図1

図2
ポートの位置を示します。カメラ用(A、気腹装置と兼用)と吸引洗浄用、術者右手(B)左手(C)・助手の右手、左手で合計6ポート。 腸鉗子(A)でS状結腸を展開し、腸間膜を無傷鉗子(B)で牽引。支配血管を金属クリップではさみ、ハーモニック(超音波凝固切開装置、C)で切離する、Dは吸引洗浄用。


図3

図4
癌より肛門側の直腸周囲を剥離し、金属ステープラー(GIA)を用いて直腸を切断。 小開腹(4〜5センチメートル)後、切除すべき直腸とS状結腸の一部を体外で切除して再び気腹し、体内で吻合器(EEA、矢印)を用いて直腸(R)とS状結腸(S)を吻合している。

図5
 
手術終了時の創部(D:ドレーンを1本挿入してある)。  

腹腔鏡下幽門側胃切除術(早期胃癌に対する術式):
 最近の2年間で腹腔鏡下幽門側胃切除が40例、胃全摘が10例、噴門側胃切除が3例あり、全例元気に問題なく退院されています(開腹術への移行なし)。今後は早期癌から少し進行したものまでも適応とすることで、患者さんにあたえる負担を少しでも軽減していくつもりです。現在当科で標準的に行われている腹腔鏡下幽門側胃切除をシェーマで紹介します。当科の特徴は、6ポート法と吸引器(スコピストが操る)による術野の展開にあります。6ポート法は3人の外科医が両手をフルに使用することで合理的な術野の展開と迅速な手術手技を可能にしました(本術式の平均手術時間は2時間30分です)。腹腔鏡下直腸手術とは違って、胃と腸の吻合は小開腹創から直接手縫いで吻合しています。完全腹腔鏡下手術へのこだわりはなく、安全で確実な方法をとるのが当科の方針です。


図1

図2
6ポートと肝臓を脱転するリバーリトラクター(G)が入ったところ。術者は患者さんの右側、左側と立ち位置を移動しながら手術します(助手は術者の反対側に立ちます)。トロッカーの位置は扇状を基本とします。
A、スコープ用、B、吸引器用でともにスコピストが操ります。
C/E、術者(助手)右手、D/F、術者(助手)左手
まず手術の流れを説明します。図のように体の中では胃は様々な血管から動脈血流(赤色)をうけ、また静脈血流(青色)として肝臓へ送り出しています。これらの胃周囲の血管を大きく分けて4か所(赤矢印)で切離して空色で囲まれた範囲を切除します(胃の切除範囲は全体の3分の2に相当します)。


図3

図4
十二指腸の切離は助手に胃を持ち上げてもらい(B)、エシュロンの自動縫合器(A)を用いて行います。 所属リンパ節の郭清を行います。通常の開腹手術とそんなには変わりません。スコピストが吸引器(C)で膵臓を押えて、術者は左手の無傷鉗子(B)で組織を把持して、右手のハーモニックスカルペルACE(A)で主要血管以外の周囲の結合織を丁寧に切離していきます。

図5

図6
矢印でしめす左胃静脈をクリッピングして切離したら、左胃動脈をリガクリップL(A)で2重にクリッピングして切離します。 ここから先は7cmの正中切開をおいてウーンドリトラクター(緑の丸でしめす)を装着し、この窓からすべての開腹操作を行います。まずリニアカッターで胃を切離します。

図7

図8
直角の遮断鉗子(A)を十二指腸、胃にそれぞれかけて固定し、3−0バイクリル吸収糸(B)を用いて手縫いで胃と腸を吻合します。吻合は18から20針で行われます。 手術終了図です。矢印が吻合部を示しています。Aは閉鎖式のフラットドレーンです。皮膚切開部はすべて吸収糸で埋没縫合します。

[呼吸器外科]
 胸腔鏡手術は、肺癌を含む肺腫瘍、縦隔腫瘍、胸壁腫瘍などの胸部腫瘍性疾患や、自然気胸などの良性疾患に広く用いられています。当呼吸器外科に於いては、年間肺癌手術件数70〜80例の約半数、その他の手術(年間100例以上)の3分の2が胸腔鏡手術です。
 肺癌に対する胸腔鏡手術の適応基準は、進行度1期、肺の分葉(上葉、中葉、下葉それぞれの肺葉の別れ具合)が良いこと、高度癒着が無いこと、肺門部(肺の根本)に高度な炎症性変化(陳旧性結核など)が無いことです。つまり、開胸術と同等の癌の根治性と手術の安全性が確保される場合に、より侵襲の少ない胸腔鏡手術が選択されます。

胸腔鏡下右上葉切除術(1期肺癌に対する標準術式)

Fig.1

Fig.2
側胸部2箇所にポート、肩甲骨の斜め後ろに小開胸(6〜10cm)を置きます。 右肺は上・中・下の三葉に分かれています。腫瘍が上葉に認められます。

Fig.3

Fig.4
上葉と下葉の間から上葉へ向かう肺動脈の枝を結紮し切離します。 上葉と中葉の不分葉間を自動縫合器にて切離します。

Fig.5

Fig.6
上肺静脈を自動縫合器にて切離します。 肺動脈上幹を自動縫合器にて切離します。

Fig.7

Fig.8
上葉気管支を自動縫合器にて切離し、上葉を摘出します。 気管周囲のリンパ節を郭清して、手術を終えます。

[泌尿器科]
 泌尿器科領域では尿道、膀胱、尿管といったもともとある体外へ開口している穴(尿路)から内視鏡を入れて臓器の内側から手術する内視鏡手術があります。これらには経尿道的膀胱腫瘍手術、経尿道的前立腺手術、経尿道的尿管手術があります。また腎盂といわれる尿路に穴をあけて行なう経皮的腎臓手術が1985年頃から行なわれてきました。その後、腹腔鏡手術として腎・副腎の手術がおこなわれるようになっています。また、腹腔内精巣(高度の停留精巣)に対しては診断、治療の面から腹腔鏡手術は有用です。

[産婦人科]
 低侵襲手術に対するニーズに応え、2004年から腹腔鏡下手術・子宮鏡下手術を行っております。わが国では腹腔鏡下手術の悪性疾患への応用はいまだコンセンサスが得られておらず、当科では主に良性疾患を対象に行っています。(子宮頸部上皮内癌は対象としています)従来の開腹手術と比較し術後の痛みが少なく、社会復帰が早くなります。子宮鏡下手術で翌日、腹腔鏡下手術で術後4日目に退院となります。切開創は美容面に配慮し、臍に隠れる場所と下腹部で術後目立たない場所を選択しています。創部は皮下を吸収糸で縫合しますので術後抜糸はいりません。ただし全例が腹腔鏡下手術の適応となるわけではありません。開腹手術と比較し腹腔鏡手術には限界もあり特異の危険性もあります。
 患者にとって最も適切な医療を提供すると言う観点から侵襲を軽減させることが可能なら腹腔鏡下手術を選択し、そうでなければ開腹術を選択すべきであると考えます。
 大きな子宮筋腫や卵巣腫瘍、子宮内膜症などで高度の癒着が予測される場合には開腹での手術を選択します。
 2010年一年間で115例の腹腔鏡下手術と6例の子宮鏡下手術を行い、子宮外妊娠や卵巣のう腫茎捻転等の緊急時にも可能な限り腹腔鏡下手術で対応しています。主に気腹法で行っていますが、症例によっては吊り上げ法で行う場合もあります。

腹腔鏡下手術対象疾患
 子宮外妊娠,子宮付属器腫瘍,子宮筋腫(漿膜下筋腫・筋層内筋腫)
 子宮内膜症,子宮頸部異形成・上皮内癌

子宮鏡下手術対象疾患
 子宮筋腫(粘膜下筋腫),子宮内膜ポリープ

当科で行っている術式
 腹腔鏡下卵管切除術,腹腔鏡下付属器切除術,腹腔鏡下卵巣のう腫核出術
 腹腔鏡下子宮全摘術(LH),腹腔鏡補助下子宮摘出術(LAVH)
 腹腔鏡下子宮筋腫核出術(LM),腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術(LAM)

腹腔鏡下手術の実際

Fig.A

Fig.B
切開創・臍 5ミリメートル 右5ミリメートル 左12ミリメートル トロカール挿入(正中に5ミリメートル) 術後6ヶ月の創部(患者本人の了承を得ています)




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